2026年9月10日/検証記/ネックヘルス
ネックヘルスの教材づくりで、確かめ続けていること
トライエイドを核にした新しい教育プログラム「ネックヘルス」の教材を、この夏からずっとつくっています。首は、扱い方を間違えると影響が大きい部位。教える以上、根拠をどれだけ確かめたかが、そのまま責任の重さになると感じています。
首を回す動きは、どこで起きているのか
さて、「首を横に回す」というひとつの動きも、実は首の骨(頸椎)が持つ8つの継ぎ目それぞれが、少しずつ分担して生まれています。
1987年に発表された、健常な成人(20〜26歳)を対象とした研究があるのですが、CT(体の中を輪切り状に撮影する検査)で、頭を真横まで最大に回した状態を撮影し、後頭骨から胸椎の一番上まで、8つの区間それぞれがどれだけ回旋を担当しているかを測定したものです。この研究はこれまでに150件以上の論文に引用されており、頸椎の動きを語るうえでの基礎的なデータになっています。
そこで測定された分担(片側最大まで回したときの平均値)は、次のとおりでした。
- 後頭骨とC1の間:1.0度
- C1とC2の間(環軸関節):40.5度
- C2とC3の間:3.0度
- C3とC4の間:6.5度
- C4とC5の間:6.8度
- C5とC6の間:6.9度
- C6とC7の間:5.4度
- C7と胸椎の間:2.1度
合計するとおよそ72度。そのうち環軸関節(いちばん上の継ぎ目)だけで40.5度、全体の半分以上を担っていることになります。残り7つの継ぎ目を全部足しても31.7度で、いちばん上ひとつに届きません。首を横に振り向くという動きの主役は、実はこのいちばん上の1箇所なのだと、数字を並べてみて初めて実感しました。
その40.5度の、最初の一部を担う筋肉
環軸関節が生み出す40.5度は、最初から最後まで同じ筋肉が担っているわけではありません。
後頭下筋(こうとうかきん)という、頭の付け根にある小さな筋肉群があります。機能解剖学の専門書には、このうち大後頭直筋と下頭斜筋という2つの筋肉が収縮すると、頭が約12度回旋する、という記載があります。角度だけではイメージしづらいので、弧の長さの計算式(半径×角度)を使って距離に置き換えてみると、鼻先を基準に、真正面から12度回旋したときのズレはおよそ2.5〜3cm。500円玉1枚分くらいです。
12度を超えて回旋を続けるところからは、胸鎖乳突筋や斜角筋群といった別の筋肉が加わってきます。つまり環軸関節の40.5度は、最初の12度をこの小さな2つの筋肉が担い、残りをより大きな筋肉が引き継ぐ、という役割分担になっています。
感想
「首を回す」という、日常では意識すらしない動きひとつをとっても、担当する場所も、情報の確からしさも一様ではありませんでした。実際に測定された数値なのか、専門書の記載なのか。それを混ぜずに一つひとつ確かめる作業は、正直かなり地味です。
でも、ここまで確かめてきたからこそ、自信を持ってお伝えできることが増えました。この学びを、実際のセッションでお会いする皆さんに伝えられる日が、今からとても楽しみです。
さっそく今日の木曜10:30〜のグループレッスンで、トライエイドを使ったプログラムを行います。皆さんがどんな反応をしてくださるか、今から楽しみにしています。
2026/09/10, Oita
出典
査読論文
頸椎の回旋は8つの区間に分担されており、環軸関節(C1-C2)がそのうち40.5度(全体の半分以上)を担う
限定的・単一研究の値
健常な成人(20〜26歳)を対象としたCT計測。PMID 3686228。Europe PMCで書誌・アブストラクトを一次確認済み(2026-09-10)。
専門書
大後頭直筋と下頭斜筋の収縮が、収縮側への約12度の頭部回旋を惹起する
Kapandji AI『カパンジー機能解剖学 III 脊椎・体幹・頭部』原著第6版(塩田悦仁 訳、医歯薬出版)「後頭下筋群の回旋作用」
限定的・単一研究の値
機能解剖学の標準的教科書における記述。
指導現場での観察
12度の回旋を、鼻先の移動距離(約2.5〜3cm、500円玉1枚分)に置き換えて伝えると、受講者が自分の目で確認・修正しやすくなる
早田航(Wellness Studio Navigate)の指導現場での実践知
有力な仮説(断定しない)
弧の長さ=半径×角度(ラジアン)による計算。回旋軸から鼻先までの距離には個人差があるため目安。研究による値ではない。
